怒りの手放し方
アメリカ・ボストンで行われたフィギュアスケートの世界選手権で羽生選手が優勝を逃した。
ショートプログラムでは、一位だった。自身が持つ世界最高得点に近い好演技で、ガッツポーズ。
しかし、フリーでは思わぬミスをして二位に終わった。
試合演技前の練習で、どこかの国の選手がぶつかってきて、予定していたトリプルアクセルの練習ができなかったようだ。世界最高得点の更新を狙い、4回転サルコウを2回入れてさらに高難度にして、精密に組み立ててきた。その最後の仕上げができなかった。
相手の選手に怒ったが、「良くあること」と言って謝らなかった。それで興奮して、直後のジャンプ練習で転倒すると激しく壁を叩いた。
普段は大げさに喜びを表さない羽生選手がショートでガッツポーズをしたのも、『どうだ』という感情の爆発らしい。それが、尾を引いてフリーの失敗につながったという。
相手選手には日本から多くの非難メッセージが届いて、炎上状態だという。
謝罪した相手に対して、被害者側が「良くあることだから」と慰めることはあっても、加害者側が言う言葉で無いと、日本人なら思うだろう。
しかし、世界的には謝らない文化の国が多いという。こういうときに、どうして怒りを処理したら良いのだろうか。それには、二段階の対応プロセスがある。
(1)怒りはきちんと相手にぶつける
怒りは表現しないで押さえ込むと、自分自身を攻撃する。鍼灸院に来る患者さんでも、まじめで控えめな人が怒りをため込んで自分自身の身体やメンタルに不調を来している方が多い。その時は、ちゃんと相手にはき出しなさい、怒りをぶつけなさいと助言をしている。
羽生選手もクレームを付けたようだが、足りなかったかのも知れない。十分、発散が必要だ。
(2)相手をこちらの思うように動かそうとしない
相手に謝罪させようとしても、しないかも知れない。相手の発言や行動が自分の思うとおりにならなくても、それに対してまた怒りを持つことは辞める。
米国に渡り、大リーグで活躍した(している)松井選手やイチロー選手が、心ないマスコミの批判やライバル選手について、どう思うか聞かれて、「気にしません」と答えている。『相手の言動はコントロールできない、コントロールできない問題は自分の問題じゃない』という智慧、割り切り。
きちんと(1)で怒りを表現したら、相手の問題(言動)を自分の問題にしない。これが怒りを手放す方法だ。
羽生選手は、若いが賢い選手なので、同じ失敗はしないであろう。リスクマネジメントに、練習中の衝突のインシデントだけでなく、その後の相手の日本では非常識な反応・その対策もリストに入れることだろう。
否応なく、グローバル化が進んだ世界で我々は生きているので、価値観の多様化にうまく対処していかないといけない。日本とて一つでは無い。それでも、日本に生まれ、気配りのある日本に住む幸せを感じる。
2016年4月13日