楽で長続きする姿勢=正しい姿勢

もろもろ 武道 鍼灸

正しい姿勢は、楽で、長い時間続けても疲れにくく、また、気持ちの良い姿勢でもある。

重心が身体の中心を垂直に通ること、脊中のS字カーブを保つことがポイントです。

(1)正しい姿勢
気持ち良い為には、どこにも力みがなくリラックスして、合わせて楽に呼吸ができる姿勢てあることが大切です。それには骨盤を立てて、その上に脊柱(腰・背・首)が真っ直ぐにのり、更に首の上に頭が真っ直ぐ乗ることです。言わば、骨盤が植木鉢で、その上に脊中が松の木のように真っ直ぐに伸びたイメージです。

よく頭の天辺からつり下げられた人形のイメージで項を伸ばして全身の力を抜いて真っ直ぐに、…、と言われます。しかし、実際にどうしたら良いかよく分かりません。具体的には、『首を長くできるだけ伸ばそう』と意識して首の筋肉を伸ばすと、背筋が引き上げられて近い形になります。

1正しい姿勢

(2)正しい姿勢を呼吸でチェック
呼吸は鼻や喉を通り、『胸や腹から尻を通り踵まで下に通り抜けていく感覚』を保つようにします。
▲骨盤が前傾や後傾をすると呼吸が骨盤内でとどまり、尻まで抜けません。腰を前に出して反ると立派に見える気がするかも知れないが、骨盤が前傾してあちこちに無理な力がかかるので要注意です。

(3)前後の重心線を意識して立つ
解剖学的に重心線を意識した正しい姿勢を図に示します。
前後の重心線では、特に腰を前に出しすぎたり、お尻を後ろに出しすぎないように気をつけることです。耳から肩、腰、膝、くるぶしの少し前が一直線になるように心がけましょう。その時に脊中のS字カーブが保たれます。
3正しい姿勢 前後の重心線

(4)左右の重心線を意識して立つ
左右の重心線では、肩や腰が左右どちらかに傾かないように鏡を見てチェックしましょう。
▲職業や癖によって傾いていることがあります。足を組んだり、首を横に曲げる癖も要注意です。
4正しい姿勢 左右の重心線

(5)ディスプレイを使う時の座り姿勢
基本は普通に座るときと同じく、腰、膝、足、さらに肘の関節が90°です。それには、自分の姿勢に加えて、条件に合った環境を作ることがポイントです。
5ディスプレイを使う時の座り姿勢

<ディスプレイ>
画面の上端が眼よりも下で、視線が20°程度にやや下向きに見える角度になるような高さにします。距離は40cm以上にしましょう。照明は、天井の全体照明と机上の資料用と二種類あると良いでしょう。
◇ノートパソコンの場合は、できるだけ外付けのディスプレイ(モニター)を購入した方が条件を満たしやすく、画面も大きいと作業効率もアップします。

<椅子>
座面が適度な硬さで、腰が当たる背もたれがあるものにします。足が床にしっかりと着いて、足の角度と膝の角度が90°になる高さに調節をしましょう。
◇ディスプレイとの角度を正しく保つために、場合によっては、踏み台を置いて高さを調節します。
○腰・上体はは先に述べたように90°(から~115°)になるように姿勢を作りましょう。
▲背中を当てると姿勢は悪くなるので、腰を引いた時に尻と腰が背もたれに当たるようにしましょう。

<キーボード>
正しい姿勢で座って、肘が90°になる角度を保てる高さにします。長時間利用する場合は、特に重要です。
◇ノートパソコンの場合は、できるだけ外付けのキーボードを購入して、キーボード台も利用すると条件を満たしやすくなります。外付けなら、キーピッチ、ストロークも自由に選べて快適に入力できます。キーボード台はホームセンターで押し入れ用のすのこなどを購入して、バラせば簡単に自作できます。

※「ディスプレイを使う時の座り姿勢」補足
IT化が進んだ現代では、多くの人がパソコンを使っています。ディスプレイを使う作業は、1980年代にオフコンが普及した頃から研究されてきました。

私は、40年以上コンピュータ関係の仕事をしてきましたが、上の環境を作ってきたので、幸い首肩コリ、腰痛にはならずに済みました(剣道や運動でなったことはありますが)。自作のキーボード台を職場に初めて持ち込んだときは奇異の目で見られたが、直ぐに慣れて快適でした。

キーボードを見ないで入力できるブラインドタッチは、正しい姿勢をキープして疲れず、作業を早くするために必要な技です。少し訓練すれば誰でもできるのでマスターしましょう

(6)歩く、走る姿勢
基本は立つ姿勢と同じく、脊中のS字カーブを保つことです。顎を軽く引き、お腹を引き締め、胸を張りすぎず屈まず、腰を反りすぎず、お尻を出しすぎないことです。

特に大事なのは目線です。遠くの山を見るように、うつむかず仰向かず、平視から少し上を見ることです。都会では、山が見えなければ、遠くの電柱や塔やビルの角を目印にして見ると良いでしょう。

もう一つ大事なのが足を出すときの起点を体軸のどこに置くかです。それは、下図に示す胸椎10番(前から見るとみぞおち)です。解剖学的には股関節と思うかも知れませんが、首腰と同様に胸(胸椎)も回転します。胸椎10番を回転の中心に置くと、歩幅が広くなります。

膝を伸ばして大股で歩く、竹馬に乗ったようなイメージ、自分の脚が竹になった気持ちが近いでしょう。

これには筋力が必要ですが、力強くダイナミックで、心も晴れ晴れします。ストライド走法といい、足が長く見えます。アテネ五輪マラソン種目で金メダルを獲得した野口みずき選手がそのお手本です。
6歩く、走る姿勢 回転の中心は第10胸椎

※「歩く、走る姿勢」補足
(a)剣道への利点
胸椎10番を回転の中心に置くと、頭胸は回転せず、真っ直ぐ前を向いています。それに、胸椎の11番、12番は胸(胸骨)に着いていないので、11番や12番が回転しても上体(頭や肩胸)は回転しません。ということは、上体はぶれずに視線も変わらず真っ直ぐに動作できます。剣道で、上体(頭肩胸)が前を向いたままで回転しない、動かないということは、相手が動作に気づきにくい事を意味します。打突の好機は動作の起こりですから、それがわかりにくいということは重要な利点となります。

(b)足を出すときの起点いろいろ
胸椎10番以外にいくつかあります。
・腰(尻)から動く
腰を捻ったり、お尻を振って歩くのは、動作が大きく、目立つ上に疲れやすいです。
・股関節から動く
滑らかな動きになるが、歩幅が狭く運動量が少ないです。
・膝から下で動く
腰を落として膝から下で歩いていると、歩幅も狭く、スピードも出ない、若々しさがなく残念な姿です。

(7)動的起立基本姿勢(素速く動くための立ち姿勢)
先に示した立つ姿勢は、重心線が頭・体幹・下肢を通して一直線となり、小さな筋力で姿勢を保持できます。静かに立っているには適した正しい姿勢だが、抗重力筋を緊張させているので、敏速に動作するには不向きといえます。いわば、静的基本姿勢です。

それに対して、身体を四方・八方、どの方向にも自由自在に移動できると共に、千変万化の動作をタイミングよくできる姿勢が動的起立基本姿勢(自然体)です。

肘・腰・足の関節を少し屈曲させ、頭部と体幹をわずかに前傾させ、筋をリラックスさせて立ちます。すると、体勢が崩れない安定した姿勢でありながら、安定の内にも『身体移動に都合の良い不安定性』が含まれています。宮本武蔵の自画像にその特徴が伺えます。
7動的基本姿勢 武蔵も(三橋秀三)

※動的起立基本姿勢補足
(a)剣道の構え
胸を豊かに開き、両肩を降ろして肩や腕の筋をリラックスさせる。呼吸のしかた、下腹の力の入れ方と深く関係があることを研究すると良いでしょう。
▲両肩を後ろに引くと胸が広くなるが筋が硬直する。両肩を前に出すと胸が狭くなり、竹刀の操作が不便になり、打突動作が小さくなる。両肩を挙げると肩に力が入り、腕にも力が入る。お勧めできません。

(b)素速く動くための姿勢
剣道のように立っていて、あらゆる方向に相手を見ながら瞬時に短距離動くには、武蔵の動的起立基本姿勢だが、早く動くには低いほど有利で、スポーツではそれ以外の姿勢もあります。
・ともかく早く動くには、手を着いて構えます。例えば、クラウンチングスタート、相撲の立合。
・相手を見ながら早く動くには、中腰で構えます。例えば、野球の内野手、テニスのサーブレシーブ。

(8)どんなに良い姿勢でも、長くなりすぎないように
適度に休憩や体操、姿勢を変えることが大切です。

※※図の引用元
東洋療法学校協会 編「解剖学 第2版」医師薬出版株式会社 2008
「新・VDT作業の手引」日本電気株式会社コーポレートデザイン部 1992
三橋秀三「剣道」大修館書店 1972

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